Destiny

バラックを連ねた街に踏み入ると、銀のウロコが光る。私をからかう悪ガキが剥く褐色の尻。闘鶏のトサカの赤。黒真珠の舌ピアス。南国特有の腐臭にも似た甘酸っぱい匂いのなかで、路地は様々な湿った原色に溢れていた。

奔流のような色の連続に導かれるように、路地の奥へ奥へと更に踏み込んで行く。毎日へ、路地に自分を曝すように歩き回る。私に向けられた警戒心は、好奇心に変わり、それは親密感となった。

原色の路地のなかで私は、あきらめるかのように住み着く。あたかもそれは最初から予定されていたかのように。

初出

2002年9月  新宿コニカプラザ 個展 「Destiny」